第22章 可愛いひと
「だって…、しょうがないじゃない。コレしかないし。こうやって前を抑えておけば…。」
ホテルを出たらお店で新しいものを購入しよう。
「却下だ。」
モモの意見はスバッと切り捨てられる。
これまた不機嫌そうに眉間にシワを寄せて。
「そう言われたって…。」
ローはのそりと起き上がり、ベッドに腰をかけると、盛大にため息を吐いた。
「ハァ…、お前はバカなのか? そんな格好をして他の男に肌を見られたらどうする。」
「まぁ、そうなんだけど。でも…。」
「でも、じゃねェよ。お前は危機感が足りなすぎる。…ちょっと買ってくるから、待ってろ。」
そう言うとローはさっさと外へ出て行ってしまう。
(…自分は裸にパーカーのくせに。)
だいたい以前は、自分の服装が保守的すぎるとずいぶんダメ出しをしたじゃないか。
それが今は少しの肌が見えるのもダメ。
決して露出度が激しい服装をしてみたいわけではないが、自分がソレを着たとき、彼がどんな反応をするかは見てみたい気がした。
しばらくして、ローが購入してきた服を身につけ、2人は街へ散策に出た。
街は昨日と同じく賑わっていたけど、明らかに雰囲気が違っていた。
チラホラと仮面をつけた人たちに出くわす。
「あの人たち、なにかしら…。」
彼らの様子を見ると、昨日の仮面の人を思い出し、心臓が嫌な音を立てる。
「祭りのようだな。ここいらでは仮面をつけて仮装するらしい。」
「…そうなの。」
趣味の悪い仮面だ。
どうせなら、もっと可愛い仮面にすればいいのに。
「あっちに出店が出てるな。」
「え、ほんと?」
考えてみれば、こんな大きな街のお祭りなんて初めてだ。
先ほどの胸のざわめきなど忘れ、ワクワクとそちらに目を向けた。