第22章 可愛いひと
「いらっしゃい!いらっしゃい! 水水肉はどうだい? 柔らかいよー!」
「お姉さん、こっちは水水飴だよ! 甘くって、とろけちゃうよ!」
目移りしてしまいそうなくらい、様々な出店が建ち並ぶ中心街。
モモはその熱気に圧倒されていた。
「これが、お祭り…!」
すごい、街中が宴を開いているみたい。
「なんか欲しいモンはねェのか?」
「うん…。なんだか、胸がいっぱいで…。」
胸に手を当て、感動したように息をハーッと吐く。
(こんなんで、そんなに感動すんなよ…。)
彼女の感情のハードルはいちいち低い。
「…片っ端から買ってくか?」
「ふふ。ベポじゃないんだから、そんなに食べられないよ。」
ああ、でも、せっかくだから なにか自分の知らないものを食べてみたい。
(あれは…?)
「どうした?」
ピタリと足を止めるモモの視線の先には、ひとつの出店が。
「うん、アレ…なにかなって。」
「…?」
“水水ソフトクリーム”
「水水の意味はわかんねェが、ソフトクリーム屋みてェだな。」
「そふとくりーむ?」
キョトンと首を傾げた。
「…知らねェのか?」
「だって、わたしがいた田舎町に、そんなオシャレなものなかったわ。」
「別にシャレてねェだろ。」
あ、今、バカにしたでしょう。
ムッと頬を膨らました。
「…むくれんなよ。買ってやるから、許せ。」
そう言って、ローはソフトクリームをひとつ買ってくれた。
「ホラ。」
「わぁ、ありがとう…!」
コーンの上にくるくると巻かれたクリームは、なんとも芸術的だ。
周りの人がそうするように、モモもクリームをペロリと舌で舐めてみた。
「---!!」
その瞬間、驚愕する。
「どうした?」
「つ、冷たい…!」
「ソフトクリームだからな。」
「甘い…!」
「…ソフトクリームだからな。」
それから、それから。
「美味しい…!」
「良かったな。」
満面の笑みを見せるモモに、ローも嬉しくなる。
「…もう1個食べたい。」
ペロリと完食したモモはおかわりをねだる。
「腹こわすから止めとけ。」
「お願い、もう1個だけ…!」
結局、モモのキラキラとした眼差しに負け、ローは財布の紐を解いたのだった。