第22章 可愛いひと
ローの温かな手が、スルリとモモの脚を這った。
いつもなら、それを心から受け入れる。
だけど、今は--。
パシ…ッ。
初めてローの手を振り払った。
「……シたくない。」
そんなヒドいことを言うあなたとは…。
しかし、その言葉をどう捉えたのか、ローは眉間に深いシワを刻んだ。
「他の男に目移りでもしたか…?」
「……は?」
なにを言っているのか。
モモが言っているのは、そんなことじゃない。
ただ、こんなギスギスした雰囲気で身体を重ねたくないと言っているだけ。
「さっきも言ったが、お前は俺のモンだ。お前の意志なんか関係ねェ。他の男に惹かれようが、お前は一生、俺だけのモンなんだよ。」
ローの瞳に狂気の光が宿る。
(だから、なんでそうなるの?)
他の人に目移りですって?
とんだ勘違いだ。
誤解を解こうと口を開くけど、その口が言葉を紡ぐ前に、なにかが口内に押し込まれる。
「……! …むぐ…ッ」
押し込まれたのは、ローのハンカチ。
「くだらねェことしか言えないなら、いっそ、もうなにもしゃべるな。」
(だから…、違うってば…!)
ちゃんと話がしたいのに、ハンカチでいっぱいになった口ではなにも伝えられない。
ハンカチを取り出そうと口に手をやれば、今後はその腕を捕らえられて、どこから取り出したのだろう、両手首に手錠をかけられてしまった。
ガシャン…。
冷たい鉄の感触が肌を伝う。
どうしてこうなったのだろう。
解きたい誤解は、伝えたい言葉は、もうローの耳に届かない。