第22章 可愛いひと
チーンというベルの音と共に、最上階に達したエレベーターの扉が開く。
このエリアにはたった一室しか部屋はなく、いわゆるスイートルームというやつだ。
目を白黒させるモモに構わず、ローは部屋のドアを開けた。
さすがはスイートルーム。
とても広い。それにガラス張りの窓からは市街が一望できる。
でも、なにか様子がおかしい。
こんなに広い空間なのに、部屋はたったのひとつしかないワンルーム。
照明は薄暗く、あまりくつろげる雰囲気ではない。
極めつけは、部屋の中央に位置したベッド。
これがまた、とんでもなく大きい。
船でいつも使うローのベッドも、モモからしてみればずいぶん大きいと思ったものだが、これはその比ではない。
まさにキングサイズ。
(ここって…。)
まさか、噂には聞いていたが…。
もしやあの、恋人たちだけのための、いかがわしいホテル--。
その考えに思い至った瞬間、抱え上げられていたモモの身体はキングサイズのベッドへと転がされる。
ボヨン…。
「……!」
なんと、ウォーターベッドだ。
さすがは水の都。
(…って、そうじゃなくて。)
こんなホテルに連れてきたということは、当然…。
ローを見れば、同じようにベッドに乗り上げ、当たり前みたいにモモの服に手を掛けた。
「ロー、ちょっと待って…。」
まさにこれからスるつもりのローを慌てて止めた。
(だって、まだちゃんと仲直りもしてない…!)
モモとしては、キチンと誤解を解いてから熱を分かち合いたい。
しかし、ローはそうではないようで…。
「うるせェよ。お前は俺のモンなんだ、いつどこでシようが俺の勝手だ。」
その横暴な言いように、またもやカチンとくる。
「……ッ!……なんでそんな言い方をするの?」
「なんでもなにも、事実だからな。」
暴君のような彼は、まるで出会った頃、モモを無理やり自分のものにしようとしていたローとよく似ていた。
どうして?
わたしたち、想いは通じ合っているはずでしょう?