第21章 魔術師のカード
「ロー…痛い…ッ、離して…!」
歩幅が違いすぎるのにも構わず、モモの手をグイグイと引っ張るローに堪らず訴えた。
しかしローはそれを聞き入れず、引きずるように歩く。
「離してってば…!」
狭い路地にさしかかったとき、もう一度訴えた。
すると今度は願いを聞き入れられ、モモの手は解放されたが、変わりに壁に押しつけれられる。
ドン…!
モモの顔の横に、勢いよくローの腕が突き立てられた。
「それで…? 離したらあの男のもとへ行くんじゃねェだろうな…。」
言われた言葉に大きく目を見開く。
「…本気で言っているの?」
自分がホーキンスのもとへ戻るとでも本気で思っているのか。
「………。」
ローはなにも言わない。
けれど、その目に僅かながら疑いの光が宿っているのをモモは見逃さなかった。
「呆れた…。そんなわけないじゃない。」
なんてヒドい人。
なんて馬鹿な人。
わたしがどれだけあなたを好きか、まだわかっていないの?
「勝手に迷子になったのは反省してるわ。ごめんなさい。…だけど、わたしがあなた以外の誰かに心を動かされることはないから。」
「………。」
尚もローは黙ったままだ。
いつもの自信満々な彼はどこへいったのか。
それともモモのことが許せないのだろうか。
「…怒っているの?」
「……舌を出せ。」
「え…?」
質問に対して、まったく違う回答が返ってきた。
「聞こえなかったのか、舌を出せと言ったんだ。」
「え、えと…。」
ローの命令の意図はわからないが、とりあえず言うとおりにチロリと舌を出してみた。
モモの愛らしい唇から短めの舌が覗いた瞬間、ローは屈み込んでソレを口に含んだ。
「ん…!? ん…ぅッ」
予期せぬ行動に、思わず腰が引く。
しかしそれより先にローの腕が絡みつき、逃がしてはくれなかった。
(ちょ…、ここ…、外…!)
遠慮なしに口腔を弄るローに内心ひどく焦った。