第21章 魔術師のカード
「てめェ…、バラされたいのか…。」
手のひらを広げ、サークルを作る構えを取る。
その動作に、ホーキンスの表情がピクリと動いた。
「もうッ、止めてったら!」
そんなローの腕をモモは思いっきり引っ張って止める。
「それ以上やるなら、わたし本当に怒るわ!」
「なんだと…?」
勝手なことばかり言う。
怒っているのはこちらの方だ。
「ホーキンスさんは、わたしを助けてくれただけなんだから!」
怒気をはらんだ目で見下ろすローに負けじと睨み上げる。
「……。」
モモの言葉を信用してくれたのかはわからないけど、ローはホーキンスを横目で見ると再びモモに視線を戻した。
「……行くぞ。」
そのままグイッと腕を引っ張られる。
「あ…ッ、ちょっと待って…!」
しかしローはモモの制止も聞かず、そのままズルズルと引きずっていこうとする。
「ホーキンスさん…、ありがとうございます!」
せめてお礼だけでも、と叫ぶモモにホーキンスはチラリと視線を向けた。
カランカラン…。
そうして2人は嵐のようにカフェを出て行った。
ペタリ、ペタリ。
そんな嵐にも表情を変えず、ホーキンスは空中にカードを広げ始める。
ペラリ、と1枚のカードをめくる。
「なるほど…、波乱の幕開けか。」
ぼそりと独り言を呟き、さらなるカードをめくる。
めくったカードの意味を知るのは、ホーキンスただひとり。
ここはウォーターセブン。
政府御用達の造船所がある島。
そんなこの島に波乱の種は、あといくつ蒔かれているのだろうか。