第21章 魔術師のカード
恐ろしさに唇をわななかせたとき、モモの願いが通じたのか、仮面の人の肩を誰かがガシリと掴んだ。
「…俺のツレだ。」
え…。
知らない男だった。
背が高く、髪は胸まで長い。ヒラヒラとしたローブを着た男。
眉は無く、その代わりに三角形のタトゥーが3つずつ並ぶその容貌は能面のように表情がない。
一度会えば忘れられなさそうな特徴をもつ彼に、やはり会った覚えはない。
しかし、彼はモモを“ツレ”と言った。
「…行くぞ。」
「……え。」
本当に知り合いかのように声を掛け、彼は歩き出した。
モモは彼のツレではない。
しかし不気味な仮面の人のもとには1秒たりとも一緒にいたくなくて、彼の後ろをついて行った。
「………。」
仮面の人は、そんなモモをジッと見つめていた。
「……あの。」
「なんだ。」
「どこかでお会いしましたっけ?」
「いや。」
もしかしたらモモの記憶違いかと思って尋ねてみたが、彼はあっさりとモモと会ったことがないと言った。
「え…と、助けてくれたんですか?」
「別にそういうつもりはない。」
だったら、なぜ?
彼の思惑がわからない。
会話している今ですら、彼はモモの前をスタスタと歩き、振り向きもしないのだ。
けれどなぜだろう。
先ほどの仮面の人よりも、彼の方がよほど安心感がある。
「あの…、中心街に行きたいんですけど、道を教えてくれませんか?」
風貌からして、この街の人間ではなさそうだが、この際道を教えてくれるなら誰でもいい。
「教えてもいいが、中心街に行ってもお前の探し人には会えない。」
「え…!?」
一言も誰かを探しているだなんて言っていない。
「どうしてわたしが誰かを探しているとわかったんです?」
「そう出ていた。」
「出ていた…? なににです?」
「占いに。」
占い…?