第21章 魔術師のカード
おかしい。
中心街に向かっているはずなのに、どんどん人気が少なくなっていく。
実は中心街は正反対で、モモは知らず知らずのうちに裏町の奥深くへと迷い込んでいた。
「あれ…? おかしいわ。こっちだと思ったのに…。」
明らかに道を間違えている。
「うーんと、誰かに道を…。」
正しい道を尋ねたくても、周囲に人がいない。
「困ったな…、もう一度戻ろうかしら。」
すっかり迷子になってしまい、来た道を引き返そうとしたその時、薄暗い路地から、ヌッと人影が現れた。
(あ、あの人に聞こうかな…。)
これ以上迷い込む前に、道を教えてもらった方がいい。
そう思って声を掛けようとした。
「あ、あのー…--」
しかし、途中で声を失う。
振り向いたその人があまりに不審な姿をしていたから。
マントのような服装で、男か女かもわからない。
また、顔には不気味な仮面を付けており、異様な空気を漂わせている。
その人の異様な風貌に、モモは思わずたじろいでしまう。
一歩近づかれ、無意識のうちに数歩下がる。
(あ…、わたしから声を掛けたのに、失礼だわ。)
ふるふると頭を振って思い直した。
ちょっと変な格好をしているが、外見で判断してはいけない。
ただ道を尋ねるだけなんだから。
「そ、その…、道を--」
ゾゾゾゾ…ッ
道を教えて欲しい。
その言葉が紡げなかった。
ものすごい悪寒がモモを襲ったから。
(な、なにこれ…。)
冷や汗が吹き出し、その場から動けない。
ゆっくりと近づいてくるその人から逃げなくては、と頭が警鐘を鳴らすけど、足が地面に張り付いたように一歩も動けないのだ。
まるで蛇に睨まれたカエルにでもなったかのように、モモはその不気味な人が近づいてくるのを見つめていた。
そうするうちに、すぐ目の前にまで迫ってしまった。
その人の手が、モモに、…いやモモが被ったローの帽子に伸ばされる。
(た、助けて…。)
声にならない声で、そう呟いていた。