第21章 魔術師のカード
「待って、待ちなさい…ッ、ヒスイ…!」
ちょろちょろと走り回るヒスイを追っているうちに、いつ間のにか裏町に入り込んでしまった。
早く捕まえないと、という焦る気持ちがモモの足を絡ませる。
「きゃ…ッ」
ズザ…ッ
派手にすっ転び、身体のあちこちを擦りむく。
「あ、つゥ…ッ」
「きゅきゅ!」
モモの呻き声にヒスイが驚いて足を止め、駆け寄ってくる。
「つかまえた!」
その隙を逃さず、すかさずギュムッと抱きしめた。
「きゅぃ…ッ」
手加減なしの圧力に今度はヒスイが呻き声をあげる。
「もう、どうして言うこときいてくれないの?」
「きゅいー…。」
泣きそうな声でヒスイをなじれば、途端に申し訳なさそうに鳴く。
「きゅう。」
小さな手で、スイッとなにかを差し出してくる。
「……? なぁに、これ。カード?」
受け取って確認してみると、不思議な絵柄のカードだった。
なにかのイラストが描かれているが、抽象的すぎてよくわからない。
「…これを探していたの?」
「きゅい!」
いったいなんのために…?
「…あッ! いけない、急いで戻らないとッ」
早くしないとローが心配してしまう。
渡されたカードをポケットに入れて、急いで立ち上がる。
すぐに合流しようとするけど…。
「あ、あれ…?」
どっちから来たんだっけ?
無我夢中で走ったから、どうやってここまで来たのか思い出せない。
「ああ、どうしよう…。」
面倒事を起こさないようにって言われたばっかりなのに。
とりあえず、どうにか中心街に戻らなければ。
ヤガラブル無しでちゃんと戻れるだろうか。
ついでにいえばお金も持っていない。
「来れたんだから、帰れるはず…。ヒスイ、行きましょ。」
元凶となったヒスイを抱え、モモは来た道を引き返した。