第20章 造船所
「……オイ。」
絶妙なタイミングで呼び声が割って入ってきた。
「あ、ロー。」
いけない、そういえば探されていたんだった。
顔には出さないが、いつまでたっても戻ってこないモモにたいそう気を揉んだようだ。
眉間に深くシワを寄せる。
次いで、大きなイビキをかいて昼寝をしているベポに目を留めると盛大に舌打ちを吐く。
「チッ…、コイツは護衛の意味を知らないようだな。…起きろ、ベポ!」
そのたっぷりとした腹をゲシリと蹴飛ばした。
「うわァ、ね、寝てません…!」
残念だけど、それはちょっと厳しい言い訳だ。
「ったく、いつまでふらふらしてやがる。」
「ごめんなさい。船はどうだったの?」
もうとっくに査定は終わったはずだ。
「ンマー!! お前たちの船はずいぶんとマストが傷んでいたな。火の海でも航海したのか? マストは差し替える必要があるぞ。」
「あー…、やっぱり差し替えかァ。」
ある程度は予想していたのだろう、ベポがお腹をボリボリ掻きながら呟いた。
「それって、時間が掛かるんですか?」
しばらく海には出れないのだろうか。
「ンマー!! ここ最近、注文がひっきりなしに入っていてな。悪いが3日もらうぞ。」
「…3日?」
パチクリと瞳を瞬かせた。
想像したよりも、ずいぶんと早い。
むしろ早すぎる。
「世界一の造船所ってのは伊達じゃねェようだな。」
「ああ、任せておけ。しかし、新しい船の方はもっと時間をもらうぞ。」
「そのつもりだ。」
それで、いったいどんな船にしたのだろう。
「ねえ、ロー…。」
「行くぞ。」
尋ねようとするモモを遮って、その手を引いた。
「あ…、うん。」
「待ってよー、キャプテン!」
ドシドシと慌ててベポもついて来る。
「船の修理が終わる頃にはデザイン画を見せられるだろう。楽しみにしておけ。」
アイスバーグが手を振りながら口にした言葉に、モモは心を弾ませるのだった。