第20章 造船所
「どうぞ、貧血に効く薬です。」
差し出したのはモモが育てた薬草から調合した薬。
「自慢になっちゃいますけど、そこらへんの病院でもらう薬よりもずっと効果がありますよ。」
なんたって愛情をたっぷりと込めて育てた薬草からできた薬だ。
調合にも自信がある。
「ンマー!! 君は薬剤師だったのか。それなら、ありがたく貰っておこう。」
差し出した薬に手を伸ばす。
「…どうぞ。」
正直なところ、アイスバーグは薬を受け取ってくれないと思った。
どんなに調薬に自信があっても、モモはただの小娘。
信用できる薬剤師にはほど遠いだろう。
だから彼が薬を受け取ってくれたことに少し驚いた。
そんなモモの気持ちを察してか、アイスバーグはお礼を言いながら尋ねた。
「俺が君の薬を受け取るのは不思議か?」
本音なだけに、ギクリとする。
「 こんな仕事をしていると、人を見る目には自信があってね。俺の目には君が立派な薬剤師に見えた。それだけだ。」
その言葉はいたくモモの心を打つ。
「アイツらもそうさ。一見、変人奇人に思えるだろうが、立派な船大工だ。…だから、信用してくれていい。」
「--!」
アイスバーグには気づかれてしまっていただろうか。
モモが彼らに怯えていたことに。
「…ありがとうございます。皆さんのことはしっかり信用してますので、船をよろしくお願いします。」
彼らを怖がったことに申し訳なくて、心からそう言った。
「ンマー!! 任せておけ。ウチは世界一の造船所だ。お前たちの注文は難易度が高いが、完璧に仕上げてやるさ。」
難易度が高い…?
「あの…。ローは、いったいどんな船を注文したんです?」
これにはアイスバーグが驚いた。
「なんだ、聞いてないのか。お前たちの船は--。」