第20章 造船所
ベポと共に外へ出て、ようやくホッと一息つけた。
「どうしたの、モモ。具合悪い?」
心なしか顔色が悪い。
「ううん、なんでもないの。ちょっと緊張しちゃっただけ。」
そう。きっと、ただそれだけだ。
「ああ、そうだよね。イカツイ人たち多かったし、モモみたいな女の子には怖いよね。」
「そういうわけじゃないけど…。」
でも身体が震えるほどの悪寒を感じたのは確かだ。
その正体がなんなのかはモモにもわからない。
「オバケの森から、モモはずっと働きづめだったから疲れちゃったのかな?」
ユグドラシルから授かった知識は、大いに役に立った。
まだ頭の中を整理しきれてないけど、なんとかまとめようとモモは時間があればノートとにらめっこしている。
でも、あんまりそれに没頭しすぎると、ローがへそを曲げてしまうので注意が必要だ。
「うーん、自分でも気がつかないうちに疲れちゃったのかなぁ…。」
「きっとそうだよ。キャプテンがしばらくこの島にいるって言ってたから、ゆっくりしなよ。」
「うん…。」
なんだかスッキリしないけど、先ほどの悪寒を疲れのせいだと理由をつけることにした。
しばらくすると、ベポは暇を持て余してしまったのか、イビキをかきながら眠ってしまった。
もしローがこの姿を見たら、護衛の意味がないと激怒することだろう。
ベポの昼寝を邪魔しないように造船所の前で水路を行き交う人々を眺めていると、後ろから声を掛けられた。
「ンマー!! こんなところにいたのか。船長が探していたぞ。」
いつの間にか商談が終わったようで、アイスバーグがひとりでこちらに歩いてくる。
秘書のカリファも隣にいない。
(なんだろ、アイスバーグさんひとりの方が安心するな…。)
カリファにまでモモは苦手意識を持っているようだ。
会って間もない人たちなのに、なんだか申し訳ない。