第20章 造船所
「ンマー!! まずは船の修理だったな。…カク!」
アイスバーグに呼ばれた男がこちらを振り返った。
(鼻…、長いな。)
チャームポイントというには実に個性的すぎる鼻の男だ。
「呼んだかの、アイスバーグさん。」
これまた個性的な話し方をする。
「ああ、船の修理の依頼が入った。ちょっと船の具合と見積もりをしてきてくれ。」
「了解じゃ。おぬしら、船をどこに停めた?」
カクがこちらを振り向いた。
質問に答えようとしたとき、目が合う。
ぞわり…。
背筋に悪寒が走った。
「…?」
なぜだろう。
目の前にいる男はとても優しそうな人なのに、どうして今、彼を怖いと思ってしまったのか。
「岩場の岬に停めた。」
当然、ローは特になにも感じなかったようで、船の停泊場所を答えた。
「よし、10分ほど待っておれ。」
「…10分?」
船の査定をするというには、ずいぶんと短い時間だ。
「10分あれば十分じゃ。」
そう言うなりカクは地を蹴り、ものすごいスピードで駆け出した。
「え…、そっちは崖…--!」
モモの心配をよそに、カクは迷うことなく崖から跳んだ。
「ええ…ッ」
「ンマー!! 心配いらんよ、お嬢さん。ヤツは自由自在にこの街を飛び回る、通称“山嵐”。すぐに戻ってくるだろうから、ちょっとだけ待っていろ。」
アイスバーグの言うとおり、カクは屋根づたいに次々と跳躍を繰り返し、あっという間に見えなくなっていく。
「すごい…、身軽なのね。」
その運動神経を少しわけて欲しい。
「あれでも職人頭だ、信用してくれていい。さて、新たな船を希望していたな。待ってる間、少し話をしようか。」
「ああ、もうすぐ俺の仲間たちがここへ来るはずだが…--。」
「キャプテーン!!」
ちょうど噂をしたところに、3人が大きなケースを抱えてこちらにやって来る。
換金は終わったようだ。