第3章 ハートの海賊団
しばらくキッチンで待っていると、ベポとモモが現れた。
「おっそいよー。もう腹ペコ!…あれ、モモ、その服どうしたの?」
モモはいつもの診療着ではなく、黒のパーカーを着ている。
サイズが大きすぎるせいで、丈は膝上ほどまであり、袖は何回か折っている。
(なにその、「彼氏の服、借りちゃいました」みたいな格好…!!)
モモは恥ずかしそうに頬を染めて俯いた。
「ちょっと、なにソレ!めっちゃ萌える~!」
「って、ソレ、船長の服じゃないスか。」
初耳だったのか、モモが驚いてローを見た。
が、ローと目が合うと勢いよく逸らす。
よほどさっきのが恥ずかしいのだろう、モモの顔はみるみる真っ赤になっていく。
「え、え、どういう状況?」
シャチがローとモモを交互に見る。
「なんでもねェよ。着替えを貸しただけだ。コイツの服はもう着れる状況じゃねェからな。」
モモが着ていた服は、血で汚れた上にところどころ破れていたため、処分してしまった。
「なんだ、言ってくれれば俺の服を貸したのに~。」
「お前の服なんて臭くてモモに着せられるか!」
「なんだと、コノヤロー!」
「やめろ。」
最近、どうにもくだらない諍いが多い。
やはり船に女を乗せるものではないな…。
モモはみんなの前に、いい具合に煮込まれたシチューが入った皿を差し出した。
「うっひょ~!シチューだ!」
「もぐもぐ…モモ、おいしいよ!」
スプーンを取り、ローもシチューを口に運ぶ。
(…美味い。)
彼女の料理の腕と、薬剤師として腕は手離すには惜しいと思っている。
諍いの種にならず、どうにかモモをこの船に置いておく方法はないものか…。