第3章 ハートの海賊団
「いいの?ありがとう、モモが喜ぶよ!」
いや、きっとそれどころじゃないだろう。
だけどこっちもそれどころじゃない。
パーカーをベポに押しつけるとローは早足にシャワールームを出て行った。
「モモ~、着替え置いとくね。」
当然ながら中から返事はなかった。
……ふぅ。
通路でひとり、ローは大きく息を吐いた。
鼓動がいつもより早い。
(なにを動揺してんだ、俺は。たかが女の裸じゃねェか。)
そりゃ、不意の出来事には驚いた。
悪気がなかったと言え、しっかり見てしまった。
彼女の身体は街で買う胸や尻など出るところばっかり出た娼婦や、自己主張とばかりに露出した女海賊とは違い華奢で慎ましかった。
思い出してしまうと、身体に熱が宿る。
(禁欲生活が長いからな…仕方ねェ。)
海上での船旅を理由に、自分がモモへ抱いた感情に言い訳をつける。
「あ、船長! こんなとこにいたんスか。」
前からシャチとペンギンが歩いてくる。
「モモとベポを知りません? もうメシ時なのにいなくって。…もう腹ペコ~。」
グウと鳴る腹をさすりながら、2人はキョロキョロと辺りを見回した。
もし、モモが入浴中とわかれば…。
2人の行動は容易に想像がつく。
「…じきに来る。お前らは先に準備でもしてろ。」
これ以上、モモに嫌な想いをさせるのは可哀想だし、この2人に覗かれると思うと、なんだか腹が立った。
「え、モモはどこにいるんスか~?…って、イデデデデデ!」
なおも探そうとすペンギンの耳を引っ張って、ローは2人をキッチンに連行した。