第20章 造船所
そうこう話している間に、ブルは勝手に水路を動き回り、気がつけば商店街に出ていた。
「指示も出さないのに、頭の良い子ね。」
よしよし、とブルの頭を撫でた。
「変わったものを扱う店が多いな。船をドックに入れたら、少しぶらつくか。」
どのみち船を修理に出してしまえば、街で宿をとるしかない。
「ほんと? じゃあ、わたし薬屋さんに行きたいな。」
「またソレか…。お前は薬剤の他になんか興味はねェのかよ。」
仕事バカなのは重々承知だが、どこに行きたいかと聞かれて真っ先に薬屋とは…。
ちなみに気づいているのかは知らないが、今のはデートの誘いのつもりだったのだ。
「やあね、ローったら。ちゃんと他にも興味あるわ。…本屋さん!」
「……。」
それは自分も行きたいけど…。
今わかった。
お前がちっとも気づいていないって。
「……ハァ。」
「…? なんでため息吐くの?」
「別に。鈍感もここまでくるとスゲェって思っただけだ。」
それって、わたしのこと?
心当たりのない、ヒドい言われように首を傾げた。
「造船島行きエレベーターはこちらです! ご用の方はお急ぎください。」
大きな塔の前で、綺麗なお姉さんが声を張り上げる。
「造船島行きエレベーター…? あの塔の中に入ればいいのかな?」
「みてェだな、行くぞ。」
スィーッと塔の中へ進むと、すぐに閉門時間になり、ゴゴゴゴ…という音を立てて門が閉まった。
門が閉まったことにより、塔内の水位が上がり、あっという間に浮上していく。
「わ、すごい。この島、こういう原理で成り立っているのね。」
「…身を乗り出すな。」
何度言ってもコイツは…。
見てるこっちが、どれだけヒヤヒヤしていると思っているのか。
仲間たちから言わせれば、そういうところが
過保護なのだが、ロー本人はまったく気づいていない。