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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第20章 造船所




「ロー、見て見て! 街中に水路がいっぱい! こんな街があるのねッ」

まさに“水の都”の名にふさわしい。

「オイ、あんまり身を乗り出すな。落ちるぞ。」

「そんなドジじゃないわ。」

どの口が言うのか。
半眼で睨んでやった。

「ああ、そういえばローは泳げないのよね。」

悪魔の実を口にした者は皆、カナズチになってしまう。

「安心して、わたし泳ぎは得意なのよ。もしローが水路に落ちても、助けてあげるから。」

「……そりゃァ、頼もしいな。」

本気でそう言うモモに、もはや突っ込む気も失せる。


「あ、疑ってるの? 本当なのよ。ほら、ローと初めて会ったときも わたし、海軍の船から泳いで脱出したんだから。」

「そういや、そんなこともあったな。」

海軍に捕らえられ、船底に開いた穴から命からがら逃げ出した。

そんなモモを、海軍船を襲った張本人であるローが拾ったのだ。

「そんなに前のことじゃないのに、なんだか懐かしいね。あの時はわたしまだ、口が利けなかったし。」

「そうだったな。」

過去の自分を許して、こんなふうに話ができるとは思わなかった。

もっと言えば、目の前にいる目つき悪い男が自分の最愛の人になるなんて思いもしなかった。


「なんだよ。」

「ふふ、別に。人生ってわからないなぁって思って。」

一生逃げ隠れて過ごすと思っていた自分は、今や海賊の一員。

「なに言ってる。わかり切った人生なんて、つまんねェだろうが。」

「ローならそう言うと思ったわ。でも、これから先の人生で、わかり切ったこともあるけどね。」

これからの未来、なにがあったって、これだけは絶対に変わらない。

「……? なんだよ。」


「あなたのことが、大好きだってこと!」

これだけは自信を持って言える。
だから胸を張って笑った。

「……バカ言ってねェで、行くぞ。」

あ、ねえ、ロー。
今、照れているでしょう?

いつもと変わらない仏頂面でも、耳だけが赤く染まっている。

そんなあなたを、大好きと思うのよ。



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