第20章 造船所
「…これでよし、と。」
碇を降ろし、船を固定した。
「ここに船を停めちゃって、どうやって修理に出すの?」
「さァな、堂々と正面から入れねェ以上、造船所のヤツらに出向いてもらうしかねェな。」
ではまず、そのガレーラカンパニーとやらに行かなければならない。
「じゃ、ちょっくらみんなで行きますか。」
「アイアイ!」
下船の準備をし始める仲間に、モモは微妙な気持ちで声をかけた。
「あの…、わたしは船で待っているわ。」
「ええッ! どうして、モモ。」
ベポが驚きの声を上げた。
その横ではローも眉間に深く皺を寄せている。
不満な証拠だ。
「2人とも、そんな顔をしないで。だって、政府御用達のお店でしょ? わたしが行けるはずないじゃない。」
自分はホワイトリストの手配者。
そんな政府関係者がウロウロしている場所に行けるはずない。
修理中に海軍に見つかりでもしたら、海に出ることも出来なくなる。
「水の都には正直行ってみたかったけど、わたしはここで留守番しているから。」
残念だけど、仕方がない。
みんなを危険に晒すわけにはいけないから。
「チッ…、お前はいちいち細けェことに気を遣いすぎだ。」
「細かくは…ないでしょ?」
だって、大事なことだ。
ただでさえモモに戦闘力はないのだから。
「要は見つからなきゃいいってだけだろ。」
「それはそうだけど……きゃッ」
ボスン、と頭になにかフカフカなものを被せられた。
ローの帽子だ。
「被っとけ。瞳の色がわからなきゃ、誰もお前みたいな女がセイレーンだなんて思いやしねェよ。」
珍しい金緑色の瞳。
セイレーンの特徴だ。
「……でも。」
「ぐだぐだ言うじゃねェよ、船長命令だ。」
本当は一緒に行きたいくせに、それを我慢しようとするモモが許せない。
「そうだぜ、モモ。バレやしねぇよ。」
「なんなら、付けヒゲでもするッスか?」
「それならボクの毛、使ってもいいよ。」
一緒に行こう。
みんなが次々に手を引く。
「ふふ…、付けヒゲはちょっとイヤよ。」
こんなに気にしてる自分がバカみたいに思えてきた。
ありがとう、みんな。