第20章 造船所
「みんな、島が見えたよ~!」
その日、ベポの呼び声で目的地であるウォーターセブンへの到着が知らされた。
「…わぁッ、素敵!」
初めて目にする“水の都”。
その全貌に驚きを隠せない。
「おおゥ、思ってたよりスゲーな。見ろよ、あのでけぇ噴水!」
島の中心にはとんでもなく大きな噴水が聳えており、見る者を圧倒させる。
「すごいわ、これじゃ島というより、まるで海に浮かぶ街ね。」
「こりゃ、船の修理以外にもいろいろと楽しめそうッスね。」
これだけ栄えた島だ。
造船所以外にも、それはもういろんな施設があるに違いない。
ベポもシャチもペンギンも、上陸したらなにをしようかと楽しみにしている。
(だけど、わたしは…--。)
「ええっと、港はどこかなぁ…?」
商業船、漁船、貨物船など、多くの船が出入りしすぎてベポもどこへ船をつけたらいいかわからない。
「街の方じゃねぇか?」
とりあえず街へ向かってみようと舵をとったところで、近くの釣り船の上から島人が声をかけてきた。
「おーい、君たち!」
「ん? ボクたちのことかな。」
「君たち、海賊だろ? こんなところに堂々といちゃマズイぞ。あっちの裏町に回りな!」
そう言って島人はあっちあっち、と裏町の方向を指差した。
「ありがとう、そうします。」
「おう、気ィつけな!」
素直にお礼を言えば、愛想良く手を振ってくれた。
「わたしたち海賊なのに、ずいぶんと優しいのね。」
「この前も言ったが、この島の住人にとっちゃ、俺たちも立派な金づるだ。海賊慣れしてるんだろうな。」
海賊慣れって…。
「やだなぁ、ソレ。あんまり慣れたくないわ。」
「…言っておくが、お前も海賊だからな。」
「そうでした…。」
だって、わたしの仲間たちは世間に思われる“海賊”とずいぶんかけ離れているから。
「あ、キャプテン。あそこの岬あたりがいいと思わない?」
ベポが指差すのは人気少ない島の先端。
「ああ…、そうするか。」
アイアイ! と元気に返事をしてベポは舵を切った。