第19章 水の都へ
部屋に戻り、ソファーで寛ぎながらモモは気になっていたことを尋ねた。
「ねぇ、船の修理ってどのくらいの期間かかるものなの?」
長くかかるならデッキのプランターたちを移動させなくてはいけない。
「さァな、ガレーラカンパニーは丁寧で早いをモットーにしているが、混み具合によっちゃしばらく滞在する羽目になるかもしれねェ。」
政府御用達というくらいだ、それはもう予約でいっぱいなのではないか。
ちゃんと船を見てもらうことができるのか心配になる。
「安心しろ、これでも金もツテもある。そう長くはかからねェさ。」
先日、“財宝王”アイフリードから得た戦利品は特に大きい。
あれを換金すれば、莫大な資金になるはずだ。
「そうなの。だったら、デッキに風除けとか作れないかな?」
「風除け?」
「うん。歌の力で薬草たちはずいぶん元気に育ってくれるけど、やっぱり潮風を嫌がる子は育ちが悪いの。」
贅沢を言えば船内に薬草を育てる部屋が欲しいくらいだ。
「ふむ…。」
隣に座るローがパタム、と本を閉じて考え込む。
「あ、船内で薬草を…っていうのは冗談だからね。」
そんな真剣に悩まないで欲しい。
モモだって、出来ることと出来ないことの判別くらいついている。
「そうじゃねェよ。まあ、この船にゃ無理だが、そろそろ新しい船を造るのも考えていい頃だ。」
「新しい船?」
思いもしない案に驚いて、腰が痛いのも忘れてローの方へ乗り出してしまった。
「ああ、この船もずいぶん年老いたからな。そろそろ引退も近い。」
ちょっとした炎でマストが損傷するくらいだ。調べてみればあちこちガタが来てるかもしれない。
「そうなの…。なんか寂しいね。」
新入りのモモは、そんなに長く乗っていたわけじゃないけど、それでも安心できる“家”だ。
「そんなにすぐじゃねェよ。発注から完成までそれなりに時間がかかる。少なくても年単位で考えた方がいい。」
それなら、もうしばらくこの船と一緒に旅ができるようだ。