第19章 水の都へ
「お前はどんな船がいいと思う?」
「え。うーん…、そうね。」
どんな船がいいか。
そもそも自分はたいそうなことが言えるほど船には詳しくないけど。
でも、そうだな。
これがただの夢話だとしたら…。
「潜水艦、とか。」
「あ? 潜水艦?」
てっきり庭付きの船とか、温室がある船とか、そういうものが来ると思っていたから、答えの意外性に目を見張った。
「なんでまた、潜水艦なんだよ。」
「だって、海に潜れれば無益な戦いをしなくてすむでしょう?」
海軍に見つかったり、海賊同士のくだらない潰し合いに巻き込まれないですむ。
モモはローたちの強さを信じているけど、ほんの少しでも傷ついて欲しくないのだ。
「それに、海底を進む船なんて素敵じゃない。」
潜水艦など絵本の中でしか見たことないけど、窓の外に海中が映し出されるなんて考えるだけでファンタジーだと思う。
「潜水艦か…。水中じゃ空気が流れねェから、暑そうだな。」
「そうしたら、艦内にたくさん緑を置きましょう。その子たちが温度を下げてくれるわ。」
そうすれば、薬草も育てられて一石二鳥だ。
「なるほどな。おもしろいことを考える。」
「あくまで想像よ。とても現実的じゃないでしょう?」
確かに、きっと莫大な資金を必要とするだろうけど、モモの提案には心惹かれた。
「潜水艦か…。候補に入れておこう。」
「ふふ、ありがとう。でも、わたしはローがいればどんな船でもいいと思うの。」
「--!」
あなたが一緒なら、例えどんな小舟であっても、きっと幸せだから。
ゴロンとソファーに横になると、彼の膝に頭を乗せた。
ねえ、ロー。
わたし、とても幸せよ。