第19章 水の都へ
結局、みんなで外へ出て確認することになった。
「あちゃー、これはヒドいね。」
ベポの言葉にモモもマストを見上げると、確かに上部の方に焼き焦げた跡がある。
風を受ける帆に煽られて、ギシギシと悲鳴をあげていた。
もしマストがポッキリ折れてしまったら…。
船の構造に無知なモモでさえ、それがどんな惨状になるのか容易に想像できた。
「直せるの?」
「応急処置くらいなら なんとかなるが、修理となれば俺たちには無理だ。」
この様子では、いっそマストを差し替えてしまった方が早いかもしれない。
どちらにしても、一度どこかの街でドックに入れなければ。
「まあ、ちょうど良かったかもしれねェな。」
「どういうこと?」
船が負傷してちょうど良いことなんてあるのだろうか。
「モモ、次の島はね、ウォーターセブンなんだ。」
「ウォーターセブン?」
残念ながら聞いたことがない。
首を傾げてみせた。
「ウォーターセブンは通称“水の都”って言って、政府御用達の造船所がある島なんスよ。」
「造船所…! じゃあ、修理できるのね。あ、でも政府御用達の店が海賊船なんて見てくれるのかしら。」
政府=海軍。
海軍に追われているモモとしては、当然良いイメージなどない。
「その辺は大丈夫っス。ガレーラカンパニーは、金さえ払えばキチンと仕事をする職人ばかりだから。」
政府の御用達ってだけで、別に彼らが政府であるわけじゃない。
彼らにとっても海賊は良い金づるなのだ。
「なら良かった。それまでマスト、大丈夫かなぁ?」
「あと3日くらいで着く予定だし、応急処置をすれば大丈夫だよ。」
航海士のベポがそう言うなら大丈夫なのだろう。
ならば早く応急処置をしてあげないと。
「手伝うわ、なにをしたらいい?」
「…その腰でか?」
「………。」
忘れてた…。
「お、応援するね。」
ローがハァ、とため息を吐いて呆れた視線を向けてくる。
「もとはといえば、ローのせいでしょ…ッ」
だからわたしの分も働いて!
むうっと頬を膨らませるモモに、ハイハイと返事をしてローは自分の帽子をボスンと被せた。
「オラ、野郎ども。さっさとやるぞ。」
「「アイアイサー!」」
ローの帽子を被りながら、仲間に入れずちょっとした疎外感を覚えた。