第19章 水の都へ
「はあぁぁ…。」
翌朝、キッチンにてモモは盛大にため息を零した。
腰が痛くて動けない…。
今朝目覚めたときなど、ビキビキとした腰痛に起き上がれないほどだった。
自分のせいという自覚があるのか、ローはそのまま寝ていろとしきりに言ったが、モモとしてはそうはいかない。
この船の料理番は自分なのだから。
気合いでベッドから這い起き、みんなの朝食を作ったあと、力尽きて椅子から立ち上がれなくなってしまった。
「モモ、大丈夫? 女の子なんだから腰は大事にしないと…。なにしたの?」
「あはは…。寝違えたかなぁ。」
ベポ、その言葉はローに言ってやって。
ギイ…。
ちょうどその時、ローとヒスイがデッキからキッチンに入ってきた。
動けないモモの代わりに、薬草たちの水やりを頼んだのだ。
「きゅい、きゅいー。」
ちゃんとお手伝いできたぞ、褒めてくれ、とヒスイがモモの足元に擦り寄る。
「ありがと、ヒスイ。」
抱き上げて撫でてやりたいけど、ごめん、屈んであげられない。
「もう、部屋に戻ってろよ。」
「……いや。」
だってみんなが外にいるのに、寂しいじゃないか。
昔はひとり、家の中で暮らしていたのに、いつの間にか贅沢になってしまい、ひとりに耐えられなくなった。
そんなモモの様子に、ローは知らずと唇を尖らせる。
俺がいるじゃねェか…。
それだけじゃ、不満だとでも?
ローの胸の内で、独占欲という名の黒い感情がムクムクと育ち始めたとき、キッチンのドアが乱暴に開け放たれた。
「船長、大変っス! マストにヒドい損傷が…ッ」
「なに…?」
「スミマセン、今まで気がつかなくって…。おそらくオバケの森の一件で飛び火したのか、焦げついてて。」
ペンギンとシャチの報告に、ローは盛大に舌打ちを吐いた。
「チッ…、火拳屋の野郎、面倒な土産を持たせやがって。」
すぐさま確認に外へ出る。
「ベポ、わたしも見に行きたい。」
「アイアイ。」
ベポに抱きかかえてもらって、モモもそのあとを追った。