第19章 水の都へ
「わたし、ラミちゃんに会ったわ。」
「…?」
あの時、スターエメラルドから出てきた光の子供は、きっとラミの魂だと思うから。
神秘の星を宿す、スターエメラルドには霊界と繋がっているという逸話がある。
ローのことを心配したラミは、スターエメラルドを通じて、ほんの少しの間だけ、この世界に戻って来たのだ。
だって、確かに聞いたから。
「お兄さまを助けて」と願った少女の声を。
「優しいお兄ちゃんだったのね。」
心配した妹が、思わず冥界から出てきてしまうくらいに。
「……さァな。」
正直、モモの言っていることが現実のこととは思えない。
死者は蘇らないし、まして宝石が霊界と繋がっているなんて夢物語だ。
だけど、彼女が本当にそう信じているのなら、ラミが本当に自分を許してくれていると言うのなら…。
ローは、あの日の自分を許してあげられるような気がした。
海面に溢れる海ホタルの光に、ローは愛する家族の姿を思い浮かべたのだった。
その夜は、恐ろしい人食いの森から無事に生還したことを祝して軽い宴が開かれた。
初めはユグドラシルに見せられた夢の話などをしていたが、あっという間にバカ騒ぎの宴へと変わる。
(なんだかんだ言って、騒ぎたいだけなのね…。)
ドンチャン騒ぎするベポ、シャチ、ペンギン。
それに手を焼く自分と、ひとり静かに飲むロー。
すっかりお決まりのパターンだ。
そして酔いつぶれた3人をキッチンに置いて、ローとモモが2人で自室に戻るのも、お決まりのパターン。
しかし、今日はそれだけでは終わらない。
なぜなら、モモはローと約束をしていたから。
“ひとつだけ、なんでも言うことをきく”