第3章 ハートの海賊団
「うん、キャプテンもモモの傷はすごく良くなってるって言ってたし、大丈夫だよ。」
鍋を弱火にすると、ベポはこっちこっち、と手招きした。
「ここがシャワールーム。ボク、ここで見張っててあげるから安心して入っておいでよ。」
モモが入浴中であることを知れば、シャチとペンギンは嬉々として覗きに来るだろう。
船に乗せてもらっている分際でシャワールームを借りるのは気が引けたが、サッパリしたい誘惑には勝てない。
モモはベポに深々と頭を下げて中に入った。
「ボクはお風呂はあんまり好きじゃないけど、モモは女の子だもんなぁ。」
もっと気を遣ってあげなきゃいけなかったと反省する。
「あっと、着替えなくちゃ困るよね。」
覗き魔2人は仲良く釣り中だ。少しだけならいなくなっても大丈夫だろう。
ベポはモモの着替えを取りにシャワールームを離れた。
「ふぅ…一旦ここらで切り上げるか。」
これ以上没頭すると朝になりそうだ。
せっかくの夕飯を台無しにする気はない。
表には出さないが、ローはモモをずいぶん気に入っていた。
料理が上手い。
メシなんて腹にたまればどうでもいいと思っていたが、モモが来てから食事の質が普段の生活にどれほど影響するのかを気づかされた。
薬剤師としての腕が一流。
モモは自分で任せろと言うだけあり、薬草の知識や薬の調合において、そこらの町医者よりよほど腕が立った。
ローの得意分野は外科なので、内科的知識が豊富な彼女は大いに役立った。
(できれば、一味に欲しいもんだが…。)
いや、無理だろう。
彼女は海賊に向いているとは思えない。
それに男だらけの海賊船に乗せれば、船員も変な気を起こすだろうし、実際そういうことがあるかもしれない。
ふいに初日の事故を思い出す。
あの柔らかい感触がフラッシュバックした。
(チッ…、なに考えてんだ、俺は…。)
頭を軽く降って立ち上がり、伸びをする。
しばらく同じ体制でいたから身体が痛い。
(メシ前に風呂でも入るか…。)
ローは着替えを手に部屋を出た。