第18章 生まれる絆と繋がる命
「あ、あとね、あっちに誰か知らない人たちが転がってたから、とりあえず船の方へ運んでみたんだけど…。」
助ける義理はないけど、息はあったし、ベポは元来優しい性格なのだ。
「そりゃァ、俺の仲間だ。わざわざ悪いな。」
「そうなんだ。…って、アンタだれ?」
今さらながら、見知らぬ男の存在に首を傾げる。
「おっと、挨拶が遅くなっちまってすまねぇな。俺は…--」
名乗るのかと思いきや、エースはガクリとうなだれてしまう。
「あれ、どうしたの? アンタ 大丈夫?」
もしや…、と思った。
そういえば彼には変な癖があったな。
「ぐーーー。」
「ええッ、寝てる!?」
やっぱりか…。
モモは呆れてヒスイと顔を見合わせた。
「…こんなアホな男、放っておけ。船に戻るぞ。」
「そうね、患者さんが待ってるもの。」
解毒薬を作らなければ。
さっきから頭の中がソワソワする。
ユグドラシルが授けてくれた知識が、ぐるぐると回っているのだ。
早く船に戻って、薬を調合してみたい。
明日は満月、ヒスイの蜜で きっとより良い解毒薬が作れる。
そんな自信が満ちていた。
「わぁ、大きなタンコブ…。」
船に戻って、まずシャチとペンギンの様子を診た。
毒の具合より、頭部にできたタンコブの方が心配だ。
「うーん、つい本気でど突いたから…。」
目を覚ましたとき、ついでに記憶も飛んでなければいいけど。
「とりあえず2人は医務室に運んで。それからエースの仲間のために、外に簡易テントを張りましょう。」
アイアイ、と返事をしてベポはシャチとペンギンを医務室へと抱えていった。
その後を追うように、ローも医務室へと消えてゆく。
モモはヒスイと協力して船の外にテントを張り、そこにエースの仲間たちを寝かせた。