第18章 生まれる絆と繋がる命
「きゅい…!」
自分と同じく意志をもったユグドラシルが天に還ってから、ずっと黙っていたヒスイが突然声を上げた。
「どうしたの、ヒスイ。」
「きゅきゅ。」
燃える森の上空を指差した。
「あ…。」
ヒスイが差す方向には、不思議な光景があった。
幾つもの星が輝く夜空へ、燃える森から小さな光が上がっていくのだ。
それもひとつではない。いくつも、いくつも。
「この森に眠ってたヤツらの魂だな。」
「…え!」
そんなことがあるのだろうか。
まじまじとエースを見入る。
「知らねぇのか? 炎には浄化の力があるんだよ。大地が浄化されて、無念の魂が天に昇ったって不思議じゃねぇだろ。」
言われてみれば…。
星空に吸い込まれていく光は、亡くなった島人の、旅人の、ユグドラシルの魂に思える。
いつもなら、こんなホラーなことに飛び上がって怖がるのに、今日だけは心が温かくなった。
魂は巡ると言うから、天に召された彼らとまた会うことはできるだろうか。
『空に輝く星よ、光り輝く星よ。悲しいほど綺麗だね。』
どうか天国への道のりが幸せでありますように…。
ヒスイを胸に抱き、歌を唄う。
『もっと話したかったこと、もっと聞きたかったこと、たくさんあるけど。過ぎ去った時間は戻せやしない。
流れる星に願うと、いつか叶うというけれど、いなくなったあなたとは、もう会えない。』
できるのならば、もっと昔に、あなたと会いたかった。
例えば、最初に島にやって来た人間がわたしだったのなら。
『空に輝く星よ、光り輝く星よ。涙でじわり滲んでいくよ。ねぇ、涙が止まらない。わたしはずっと。
空に魂が光り、涙が出るよ。悲しいほど綺麗だね。』
ありもしない もしも話を考えるくらい、悲しいよ。
『さよならを言えないことより、喜びを伝えられない方が辛いね。
耳を澄ませば聞こえるあなたの声が、いつまでも勇気をくれるよ。もう一度会いたい。』
『空に向かって唄うよ、ずっと唄うよ。声の限り。わかっているよ、ひとりじゃないんだ僕らずっと。
いつまでも忘れないよ、忘れないよ。
あなたがいつか、思い描いた未来。』
あなたが抱いた喜びも、悲しみも、決して忘れない。
忘れずにこれからも生きていくから。
胸に抱いたヒスイが応えるように鳴いた。