第18章 生まれる絆と繋がる命
モモを抱えたローは、炎を避けて森のはずれまでやって来た。
「…ロー、下ろして。」
ずっと黙りこくっていたモモがようやく口を開いた。
とはいえ、また戻ると暴れられても困る。
そっと彼女の様子を窺った。
「心配しなくても大丈夫、もうワガママみたいなこと言わないから。」
ここに来るまでの間に、ずいぶん頭は冷えたらしい。
ローは頷き、モモを地面へと下ろした。
なだらかな丘になっているここからは、焼けていく森がよく見える。
「お前ら、ここにいたのか。」
掛けられた声に振り向くと、自分たちを探していたのか、こちらに歩いてくるエースがいた。
「悪ィ、加減が上手くできなくてよ。」
無事で良かった、と頭を下げる。
「悪いで済むか。危うくこっちも巻き込まれるとこだったじゃねェか。」
もしモモが火傷のひとつでも負っていたら、確実に息の根を止めてやるところだ。
「悪かったって。アンタならモモを連れてでも、無事に切り抜けられると踏んだんだよ。」
現にローはモモを抱えてでも燃える森の中を難なく抜け出した。
「……フン。」
悪態を吐いてはいても、実際のところローはエースに感謝していた。
あの時、もし自分だったら、泣きつくモモを振り切ってユグドラシルを貫くことは出来なかったかもしれない。
「エースの仲間は…?」
「こっちも無事だ。とりあえず海岸に置いてきたから、あとで診てくれよ。」
彼らは解毒をしないことには目覚めない。
「うん。…エース。」
「ん?」
「ごめんなさい。」
モモの謝罪を、エースは なにに対して? とは聞かなかった。
彼女はエースがどんな想いでユグドラシルに拳を振り上げたのか、ちゃんとわかっているのだ。
だから頭を下げるのだろう。
「謝る必要はねぇよ。お前はただ、優しいだけだろ。」