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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第18章 生まれる絆と繋がる命




燃えてゆく。
ユグドラシルの身体が、島中に張り巡らされた根が。

熱気が渦を巻き、モモたちを襲った。

「行くぞ、モモ。ここにいたら俺たちも危ねェ。」

「…いや。」

燃えてゆくユグドラシルをひとりにしたくない。

「チッ…。」

意地でも動きそうにないモモを無理やり抱き上げた。

「やだ、ロー。わたし、ここにいる!」

暴れるモモを無視して歩く。

「やだ、やだ…。」

ワガママだってわかってる。
でも、こんなのは嫌だ。


(泣くでない。なにも悲しいことなどないよ。)

「え…。」

どこからともなく、ユグドラシルの声が聞こえた。

(ワシは救われたよ、おぬしの言葉に。)

さしのべられた手に、どれだけ感動したことか。
それだけで、長く生きた甲斐があったと思えた。

(優しい娘。おぬしにせめてもの礼を…。)

燃え上がった世界樹の雫が煙となってモモの体内に入った。

「……!」

その瞬間、頭の中に植物に関する様々な知識が流れ込んできた。

「なに…、これ…。」

「オイ、モモ、どうした?」

明らかに様子が変わったモモを心配して覗き込む。

(心配するでない。ワシが生きてきた時間の中で得た知識を、少し分けただけじゃ。)

燃えてしまった世界樹の雫には、もはや永遠の命を与えるような効力はない。

自分の中の知識が、これからモモの助けになればいい。


(モモ、おぬしに世界樹の加護を…。)

この先の未来、どうか幸多からんことを祈る。


『モモ、優しい子。あなたはずっと優しい子でいて。その優しさは、きっと誰かの力になるわ。』


ねえ、お母さん。
わたしは本当に力になれたかな。

炎で浄化したエースの優しさ。

モモのために戦うと決めたローの優しさ。

それに比べて自分の優しさは、本当に誰かのためになったかな?

今はまだ、その答えがわからなくて、炎に呑まれる森の中、ただ泣き叫んだ。


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