• テキストサイズ

セイレーンの歌【ONE PIECE】

第18章 生まれる絆と繋がる命




「殺してくれ。」

ユグドラシルはそう言った。

その悲しそうな表情が、母の顔と重なった。

『こんな運命を背負わせて、ごめんなさい。』

母は悲しそうに何度も言うのだ。

そんな顔をしないで。

“違う”ことのなにがいけないの。
この世に、まったく同じな生き物なんていないのに。

わたしは、
わたしは--。


「わたしは、怖がったりしないわ!」

幼い頃、母に言った言葉を今度はユグドラシルに言い放つ。

「例え、あなたがどんなに違っても、差別したり、拒絶したり、ぜったいしない!」

ローが、仲間たちが、自分にそうしてくれたように、わたしもあなたを怖がらない。

だから--。

自然とユグドラシルに手をさしのべる。

「だから、わたしと一緒に行きましょう!」

一緒に行こうよ。
果てない海を、どこまでも…。



自分に手をさしのべる彼女が、まるで女神に見えた。

怖がったりしない。

差別も拒絶もしない。

一緒に行こう…。

どれも、ユグドラシルが夢にまで見たセリフ。

そんなことを言ってくれる人などいないと思った。

自分に手をさしのべる人など存在しないと…。

でも、いるのだ。

この世界には、本当にいるのだ。

自分を認めてくれる温かい存在が。


じわりとユグドラシルの窪んだ目から、涙が溢れた。

涙なんて出るはずないのに、溢れ出たソレは、かつて人々が夢追い求めた『世界樹の雫』そのものだった。


/ 1817ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp