第18章 生まれる絆と繋がる命
「殺してくれ。」
ユグドラシルはそう言った。
その悲しそうな表情が、母の顔と重なった。
『こんな運命を背負わせて、ごめんなさい。』
母は悲しそうに何度も言うのだ。
そんな顔をしないで。
“違う”ことのなにがいけないの。
この世に、まったく同じな生き物なんていないのに。
わたしは、
わたしは--。
「わたしは、怖がったりしないわ!」
幼い頃、母に言った言葉を今度はユグドラシルに言い放つ。
「例え、あなたがどんなに違っても、差別したり、拒絶したり、ぜったいしない!」
ローが、仲間たちが、自分にそうしてくれたように、わたしもあなたを怖がらない。
だから--。
自然とユグドラシルに手をさしのべる。
「だから、わたしと一緒に行きましょう!」
一緒に行こうよ。
果てない海を、どこまでも…。
自分に手をさしのべる彼女が、まるで女神に見えた。
怖がったりしない。
差別も拒絶もしない。
一緒に行こう…。
どれも、ユグドラシルが夢にまで見たセリフ。
そんなことを言ってくれる人などいないと思った。
自分に手をさしのべる人など存在しないと…。
でも、いるのだ。
この世界には、本当にいるのだ。
自分を認めてくれる温かい存在が。
じわりとユグドラシルの窪んだ目から、涙が溢れた。
涙なんて出るはずないのに、溢れ出たソレは、かつて人々が夢追い求めた『世界樹の雫』そのものだった。