第18章 生まれる絆と繋がる命
「もう終わりにしましょう。あなたもわかっているはず、こんなことをしたって、彼らは生き返らない。」
ずっと、生きることで彼らと一緒にいられるような気がしてた。
でも、本当はそんなはずなくて。
そう、すべてはユグドラシルの独りよがりなのだ。
「…どうしたらいい。ワシは、どうしたらいいのじゃ。」
愛した者たちは、もういない。
自分が、この手で殺したのだ。
それを考えると、絶叫したくなるほど、頭の中がグチャグチャになる。
誰か、誰か、この痛みをどうにかしてくれ--!
「罪を償いたいなら、直接謝りに行くしかねぇだろ…。」
気づいたときには、モモの背後でエースが凄まじい熱気を帯びていた。
彼は覇気を纏わせた炎で、ユグドラシルを燃やすつもりだ。
「待って、エース…!」
ユグドラシルは愛し方を間違えただけだ。
こんなふうに自分たちは戦う必要は、もうない。
「モモ、そういうことじゃねぇんだよ。このジジィがいくら自己防衛のためでも、愛したヤツらのためでも、なんの関係もねぇ人間を殺してきたのは事実だ。」
「そうだけど、だからって…!」
ここでユグドラシルに死ねというのか。
“ROOM”
瞬間、ローの張ったサークルがエースを包んだ。
「…なんのつもりだ、トラファルガー。」
「どうもこうもねェよ。モモが嫌がってる。それ以外に理由が必要か?」
「ロー…ッ」
ローとエースが睨み合う。
このままでは2人が争うことになる。
自分はそんなことを望んでいない。
だけど、ユグドラシルを見殺しにもできない。
死んでいった人たちのために断罪を行うエースと、モモのために刀をとるロー。
それを止めることもできない。
自分の弱さと無力さに吐き気がした。
「もうよい、セイレーン。」
先ほどまで命にしがみついていたときの彼とは別物のように、ユグドラシルが穏やかに言った。
「ワシは…、もう疲れた…。」
化け物として生きていくことに、独りで生きていくことに。
「ワシは生まれてくるべきではなかったのじゃ。」
どうしてただの植物として生まれてこなかったのだろう。
『同じ』なら、こんな思いをしなくてすんだ。
神と、化け物と、呼ばれることもなかったのに。