第18章 生まれる絆と繋がる命
「それは、あなたが今も彼らを愛している証拠だわ。」
生まれたときからひとりだったユグドラシル。
彼には家族はなく、友達もいなかった。
森には動物たちがいて、決して孤独ではなかったけど、言葉を操るユグドラシルは、ずっと誰かと話したかった。
そこで初めて、寂しいという感情を知った。
島に人間がやって来たとき、歓喜で胸が震えた。
彼らを見守ることで心が温かくなった。
勇気を出して話しかけてみたときの恐怖は、今も忘れられない。
いつの間にか自分は『神』と呼ばれた。
でも、本当はそんなものになりたくはなかった。
もっと気安く、近い存在になりたかったのに。
彼らが武器を取ったとき、絶望に打ちひしがれた。
どうして、
どうしてこんなことになった?
もし、自分に涙というものがあるのなら、きっと溢れていることだろう。
ピキリと感情にヒビが入る音がした。
『永遠の命』を望む彼らの願いを叶えたいと思った。
だから、共に生きよう。
自分の中で、永遠に--。
彼らのために、自分はなんとしても永遠を生きなければならない。
だって、自分が死ねば、自分の中で生きている彼らも死んでしまうから。
そうしてユグドラシルは、自身が殺した愛する人々のため、人を食らう化け物になったのだ。
「ああ、そうじゃ。ワシはアヤツらを愛しておった。」
いいや、今も愛している。
だから白骨化した骸を大事に大事に抱いている。
わかってる。
こんなことは間違ってるって。
本当は、神なんかじゃなく、家族になりたかった。
自分の心を見抜いたセイレーンと、ピクミンのように。