第18章 生まれる絆と繋がる命
「ふざけんな、てめェ。そんな理由で人の女に手を出してんじゃねェよ。」
ズタズタに切り裂いてやる…!
手のひらを広げ、サークルを展開させようとしたとき、その手をモモが止めた。
「待って、ロー。」
「なぜ止める。」
「確かめたいことがあるの。」
そう言ってモモはユグドラシルに向き直る。
「あなたはなぜ、そんなにも寿命にこだわるの?」
「なぜ? そんこと、決まっておろう。それは…--」
理由を教えてやろうとした。
だけど、なぜだか口にすることができない。
なぜ…。
なぜ自分は永遠の命を求める?
考えたこともなかった。
生まれては散るのが自然の摂理だというのに、どうしてそれに逆らおうとしているのか。
「ワシは…、ワシは…。」
答えが出せないユグドラシルに代わって、モモがその問いに答えた。
「あなたはただ、愛した島人と一緒に生きたかったのでしょう。」
「な…ッ」
モモの指摘に、ユグドラシルは言葉を失った。
そんなわけない、と反論したかったけど、それもできない。
それほどの衝撃を受けたのだ。
「いや、意味がわかんねぇよ。ソイツは島の人間をみんな殺しちまったんだぞ。どうみたって、愛してなんかいねぇだろ。」
エースの指摘に、ユグドラシルは我を取り戻し、それに同意した。
「そ、そうじゃ。ワシは人間どもを憎んでおる。だから殺してやったのじゃ。」
いいえ、とモモは首を振った。
「それならば、なぜ憎い島人の遺骨を今も大事にとっておくの。」
地上には朽ち果てた白骨死体があちらこちらにある。
けれど、彼らは骨の状態からして、ここ数年で犠牲になった人たちだとわかる。
加えて、地下には死体はひとつも見当たらなかった。
それなのに、ユグドラシルは島人全員の骨を今も大事に懐に抱えている。
彼が話すように、それほど島人が憎いなら、さっさと打ち捨ててしまえばいいのだ。
でも、ユグドラシルはそれをしない。