第18章 生まれる絆と繋がる命
「心配すんな。仲間さえ解放されれば、こんなやつ敵じゃねぇよ。」
ボッと拳を燃やしながらエースは言った。
“蛍火”
ポポポッと生まれた火の玉が、ふわりと触手に纏わりつく。
ボンッ
瞬間、火の玉たちが爆発し、蠢く樹の根を焼き落とした。
「…む。」
これにはユグドラシルも眉をひそめた。
炎が樹を焼くのは、自然の原理だ。
「このまま焼き尽くしてやるよ。」
エースが次の炎を繰り出そうと構える。
しかし、ユグドラシルとてただ燃やされるわけじゃない。
エースの攻撃を理解し、地下に溜めていた大量の水を体中に巡らせた。
“火拳”
迸る炎の拳がユグドラシルを打つも、その炎は触手によって阻まれる。
それも、触手が燃える様子もない。
「なに…!?」
「エース、危ない!」
エースの隙をついて触手が襲い来る。
「チ…ッ」
“アンピュテート”
ズバリッとローがその触手を断ち切る。
ビチビチと蠢く触手の断面にはたっぷりと水分が含まれていた。
燃えない理由はこれである。
エースが大きく舌打ちをした。
「貴様の炎はもう効かんぞ。さっさとセイレーンを置いていけ。」
浮き出た人面がクツクツと笑う。
「…どうしてそんなに、わたしが必要なの?」
恐怖を堪え、聞いてみた。
「おぬしらセイレーンは、植物に糧を与える歌を唄えるのじゃろう。おぬしはここでずっとワシのために唄い続けよ。」
確かに慈しみの歌を唄えば、ユグドラシルの寿命を延ばすことが出来るかもしれない。
でも…。
「わたしだって、いつか死ぬわ。」
「そうしたら、また人間を食らえばいいだけじゃ。」
どうしてユグドラシルは、そんなにも寿命にこだわるのか。
ふと、ユグドラシルに吸収されたのであろう、打ち捨てられた白骨死体が目に入る。
(あれ…、どうして…。)
モモの胸にひとつの疑問が生まれた。
(もしかして、ユグドラシルは…--。)