第18章 生まれる絆と繋がる命
「馬鹿な…、ピクミンが生まれるなどあり得ぬ。小娘、ソヤツをどこで手に入れた。」
「種を育てていたら、生まれたのよ。」
「育てたじゃと…!?」
なおさらあり得ない。
この時代にピクミンを育てられる人間なんかいないはずだ。
どんな植物も育てられる、かのトンタッタ一族ですら無理なのに、こんな小娘にどうしてそれができる?
「嘘を付くな、おぬし如きに育てられる植物ではない。」
「別に信じてくれなくたっていいけど、本当だもの。毎日歌を唄っていたら、ヒスイが生まれたのよ。」
歌…?
そんなものでピクミンが生まれるものか。
いや、違う。
さっきからこの娘が発するエネルギー。
そして金緑色の瞳。
もう絶滅したと思っていたが
この娘、まさか…--。
「小娘、おぬし、セイレーンじゃな。」
「…!」
モモのわかりやすい反応に、ユグドラシルは確信した。
この娘はセイレーンだと。
「セイレーン? なんだそりゃ。おい、ジジィ。そんなことより、いい加減に俺の仲間を返せよ。」
「良いじゃろう。」
「あァ? ずいぶん素直じゃねぇか。」
先ほどまでの態度が嘘のように、ユグドラシルは態度を翻した。
「もう、そんな人間どもは要らぬ。セイレーン、おぬしがおればな…。」
その言葉にローは敏感に反応する。
「てめェ、そりゃどういうことだ。」
「言った通りじゃ。仲間を助けて、ここを無事に出たければ、セイレーンを置いていけ。」
セイレーンさえいれば、もう人間を食らわずとも力を得られる。
「寝ぼけたことを言うんじゃねェよ。誰が渡すか! 第一、ソイツらは俺の仲間じゃねェしな。」
「悪いが俺も、自分の仲間と引き換えにモモをどうこうするとは考えられねぇよ。」
「ロー、エース…!」
2人が当たり前みたいに、そう思ってくれるのが嬉しかった。
「残念じゃ。ならば、セイレーンを残して死にゆけ。」
ゴゴゴ…。
地鳴りと共に、激しい揺れが襲い、部屋の形がみるみる変形していく。
餌として捕まえていた人間も必要がなくなった今、容赦はしない。
このまま部屋ごと潰してやる。