第18章 生まれる絆と繋がる命
「わかったか、小娘。人間と植物は相容れることはないのじゃ。」
過去を語り終えたユグドラシルを前に、モモは怒りを感じていた。
でもそれは、ユグドラシルに対してではない。
殺されてしまった人間たちに対してでもない。
どうして。
どうして、こんな悲しいことが起きてしまうの。
島人の中には、ユグドラシルを守る人は誰ひとり、いなかったの?
ユグドラシルは、島人を全員殺してしまうしか選べなかったの?
『人はね、自分と違うものを恐がり、拒絶する生き物なの。残念だけどね。』
昨夜見た、母の夢を思い出した。
結局、島人たちはユグドラシルを恐れ、拒絶していたのだろうか。
だとしたら、恐れていたのは島人だけではない。
「あなたは、可哀想ね。」
モモがユグドラシルに掛けたのは、怒りでも恐怖でもなく、憐れみの言葉。
「…なんじゃと?」
この娘は今、なんと言ったか。
自分に対して可哀想だと?
「オイ、モモ。今の話を聞いて、コイツのどこに可哀想なところがあんだよ。」
エースの気持ちは違ったらしい。
憎悪の混じる視線でユグドラシルを睨んでいる。
そんなエースに、モモは繰り返し言った。
「いいえ、エース。彼はとても可哀想よ。」
「小娘、ワシのどこが哀れだというのじゃ。」
そんなこと、初めて言われた。
ユグドラシル自身、自分を可哀想とは思わない。
自分はただ、愚かだっただけだ。
人間などを信じてしまうなんて--。
「あなたは本当は、人間がとても好きなのでしょう。でも、人間が自分と違うから、それを怖がっているんだわ。」
「---!」
モモの指摘に、なにを馬鹿なことを…と言おうとしたけど言葉に出来ず、胸の内がとても動揺したことに驚く。
「あなたは自分でそれをわかっているはずだわ。でも、認めたくないから、次々と人を襲うのね。」
過去を悔やみたくないから、新たな罪を重ねるのだ。