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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第18章 生まれる絆と繋がる命




「…そんなにも、永遠の命が欲しいのか。」

「ああ、当然だ。雫を独り占めしやがって! 早く寄越せ!」

ユグドラシルは無表情のまま、そうか、とだけ呟いた。


「ならばその願い、叶えてやろう…。」


そう言ったと同時に、ユグドラシルの根元から、彼らの欲しがる蜜の香りが吹き出した。

「なんだ、この香りは…。世界樹の雫か…!」

「子供たちを連れてこい! この香りを嗅がせるんだ!」

人間たちはこぞって匂いの発生源に駆け寄って来た。

それが世界樹の雫だと信じて。


ユグドラシルが作り出したのは、蜜の香りがする毒。

ほんの一時とはいえ、共に過ごしたことは嘘ではない。
せめてもの情けで、命を奪う毒ではなく、穏やかに眠る毒にした。

ひとり、またひとりと島人が倒れていく。

全ての人間たちが眠りについたのを見守ってから、ユグドラシルはグニャリ、と地中から太い触手を伸ばした。


永遠の命を与えてやろう。
共に生きようではないか、我が体内で…。


そうしてユグドラシルは、一度は愛したはずの人間たちを、一人残らず飲み込んだ。

一夜にして、この島から人間が消え去った。

いいや、本当は消えてなどいない。
彼らは今も自分の中で生き続けている。




それから数百年、ユグドラシルは年老いた。

植物にも寿命はある。
いくら世界樹の枝とはいえ、ユグドラシルとて不死ではなかった。

だから、人間から生気を奪うことにした。

時折、この島に訪れる人間たち。
彼らを毒でおびき寄せ、体内に取り込み、命を奪った。

そうしてユグドラシルは、永遠の命を手に入れるのだ。

どうしてそこまでして、永遠の命にこだわるのか、自分でもわからずに…。



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