第18章 生まれる絆と繋がる命
どんなものでも、100年の時を重ねると命が宿る。
俗にそれを付喪神と呼んだりするが、その摂理は植物も同じ。
100年の時を重ねると『ただの植物』から『意志をもった植物』に生まれ変わる。
ユグドラシルも、そんな植物のひとつだった。
自分が意思を持ち始めて数十年が経った頃、島に人間がやって来た。
人間たちはこの島に住み着くことを決め、その頃は自分も密かにそれを喜んだものだ。
この島には人間がひとりもいなかったから。
だからユグドラシルは人間たちを天災から守り、ときには導いてきた。
やがて人々は自分のことを御神木と呼び始める。
ユグドラシルは世界樹の枝。
ただの植物と違って神力が宿っている。
その頃になると、今のように幹上に人面を作ることができ、人語を話すことも可能になっていた。
自分が最初に話しかけたのは、まだやんちゃ盛りの子供たちだった。
ある日、イタズラ好きな子供たちは、ユグドラシルの身体で木登りを始めた。
それを危ないなぁと心配していると、案の定、足を滑らせて落下した。
目の前で子供が死ぬのなど見たくない。
ユグドラシルは枝を触手のように変形させて子供たちを助け出す。
目を真ん丸にして驚く子供たちに、ボコリと顔をだして、やんちゃはほどほどにしろと注意をしてやった。
思えばそれがいけなかったのだ。
自分の存在は瞬く間に島中に知れ渡り、ユグドラシルは御神木どころか、神として崇めたてられた。
大げさと思ったけど、悪い気分はしない。
こうしてユグドラシルは、この島の“神”として君臨したのだ。
あの日までは--。