第17章 巨大樹
カランカラン。
(なんの音だ…。)
ユグドラシルの攻撃から仲間たちを庇い、地面に伏したエースが視線を上げると、そこには衝撃によって外れてしまったガスマスクが転がっていた。
「し…しまった。ガスマスクが…。」
すぐさま拾い上げようとするけど、視界がぼやけて上手く立ち上がれない。
「もう遅いわ、ここは外の何倍もの毒密度じゃ。」
愚かな人間。
仲間なんて放っておけば良かったのだ。
人間なんて、どうせ裏切るだけの生き物なんだから。
「く…そ…。」
徐々に意識が混濁してくる。
「安心しろ。我が糧となれば、おぬしも大地の一部…。永久の命を与えてやろうぞ。」
ワシの中で…。
身体が痺れ、いうことをきかない。
ちく…しょう…。
薄れゆく意識の中、懐かしい声がエースを呼んだ。
『エース、おれ達は必ず海へ出よう! もっと強くなって、海賊になろう!』
『ししし…! エース、おれはなァ、海賊王になるんだ!』
ガシャァン…ッ
杯を交わす音が聞こえる。
サボ…。
ルフィー…。
微かに残っていた意識が遠のき、目の前が真っ暗になっていく。
「エース、しっかりして…ッ!」
耳元でやけにハッキリと声が聞こえたと思ったら、唇に温かいものが触れた。
「……ぅ。」
次いで、口の中に流れてきたトロリとした液体を飲み込んでしまう。
流された液体よりも、触れた唇が何倍も甘かった。