第17章 巨大樹
「ホッホッホ…。逃げてばかりではワシに勝てんぞ。」
まるで生き物のように自分を襲う木々を、エースはただ身を翻して躱すしかない。
能力を使えば、仲間たちが燃えてしまう。
しかし、ここは敵の体の中。
戦況はじわじわと劣勢になるばかり。
「ジジィ…! いい加減、俺の仲間を返せよ。」
「返す? それは心外、コヤツらは自らの足でここに来たのじゃ。」
もっともらしい言い分だが、全てはこの樹が出す毒のせいだ。
「どのみち、コヤツらが目覚めることはもうない。ならば、おぬしが仲間のところへ行ったらどうじゃ。」
そのガスマスクを外して…。
ユグドラシルは執拗にエースのマスクを狙う。
「ふざけんな! 俺が見たい夢は、夢は夢でも叶える方の夢なんだよ。」
白ひげを、オヤジを、海賊王にしてみせる。
「…コイツらと一緒にな!」
バキィッと巨大な根を一本、千切り飛ばした。
「む…貴様ッ、覇気遣いか。」
それも覇王色の使い手。
「なんたる幸運か…!」
ユグドラシルの顔が、不気味にクツクツ笑う。
「覇王色の覇気遣い…。食らえば100年、寿命が延びようぞ。」
そう言って歓喜するユグドラシルの笑い顔は、オバケの森と呼ばれるこの島の君臨者にふさわしいものだった。
「食らうだって? 俺がお前ェなんかにやられるかよ。」
「いいや、おぬしを食らうくらい簡単じゃ。なぁに、こうすればいい。」
ユグドラシルがそう言うと、今までエースを襲っていた木々たちが、いっせいに標的を変え、深い眠りについたままの仲間たちに刃を向けた。
エースを食らうことができるなら、こんなザコ共は死んでもいい。
「な…ッ、止めろ!」
ドーン!!