第17章 巨大樹
「放っとけ、そんなもん。」
「なにを言うの。エースはわたしたちに、いっぱい協力してくれたのに。」
恩には恩で報いるものだ。
ずいぶんと非協力的なことを言うローをたしなめた。
「…ふん。」
わかっている。
モモは優しく、義理堅い女だ。
エースを想う気持ちに、やましいものはないのだと頭では理解している。
けど、わかっていても不愉快に思うのは、仕方ない。
本当なら、モモの口から他の男の名が出ることさえ許せないのだ。
「…わかった。火拳屋のところへ行こう。」
独占欲がムクムクと顔を出すのを抑えつけて、ローはモモを願いを叶える。
だが…。
「あなたはダメよ。ちゃんと毒が抜けてからでないと。」
「あ…?」
それではなにか、モモひとりでエースの下へ行くとでも?
生意気なことばかり言うその口を、いっそのこと塞いでしまおうかと考えた。
その時--。
ドン!!
大きな音と共に、樹全体が揺れた。
「…エース!?」
きっと彼の身になにかあったに違いない。
モモは松明を手に、立ち上がった。
「ロー、ごめんなさい。少しここで待っていて。わたし、ちょっと様子を見に行ってくるから!」
「…なッ!?」
「ヒスイ、ローについていてね!」
待て、というローの呼びかけに目もくれず、モモは一目散に走っていった。
「あのバカが…ッ」
本当に彼女は、目を離すとなにをしでかすかわからない。
ローはまだ少しクラクラする頭を振って、モモの後を追いかけた。