第17章 巨大樹
「ロー、今はまだ動き回らない方がいいわ。まだ身体の中の毒素が中和しきってないの。」
「毒…? なんのことだ。順を追って説明しろ。」
ローの記憶は、モモが自分の手を離したところで途切れている。
それから深い夢を見ていたという自覚はあるが、実際の状況がわからない。
「わかった。わたしがローとはぐれてから、今までの経緯を簡単に話すわね。」
まだ頭が回りきらないローのために、モモは自分たちに降りかかった出来事をざっと説明した。
毒のこと、巨大樹のこと、そしてエースのこと。
「エース…? それは“火拳”のエースのことか。」
つい最近、白ひげ海賊団に入団した実力者。
ローも噂程度だが、知っている。
「さあ、エースとしか言わなかったから…。でも、メラメラの実の能力者だって言ってたわ。」
ならば間違いないない。
“火拳”のエース、その男だ。
「…チッ、この島にそんな大物がいたとはな。俺の刀はどこだ?」
きゅきゅ! と傍らに落ちていた鬼哭をヒスイが見つけてきた。
「そんな敵意剥き出しにしなくても、エースは大丈夫よ。」
「大丈夫」に込められた親密さにローがピクリと反応する。
「…ずいぶんと信頼してるじゃねェか。」
「それは…、まあ。」
短い間とはいえ、2人で協力しあったのだ。
信頼くらいするだろう。
「ほぅ…、そのへん、もっと詳しく聞かせろよ…。」
自分がいない間に、よその男となにをしていた?
ローの瞳に宿った嫉妬の光にモモは気づけない。
「詳しくはあとでね。わたし、エースのところに行かないと…。」
「あァ?」
今、なんと言ったか。
「解毒のことを伝えに行かなくちゃ。」
そう言って、モモは松明に新たな火を灯す。