第17章 巨大樹
「ローッ、なんてことを…! 今すぐ窓を閉めなさい!」
父の怒声もローの耳に入らない。
「歌が、歌が聞こえるんだ…。」
『大切な日々はいつでも、当たり前じゃないんだ、きっと。』
『くじけてしまう日もあるけど、ひとりで泣く夜はもうない。』
自分は、知ってる。
放っておくとなにをしでかすかわからなくて、いちいち泣き虫な彼女を。
『君に、会いたいよ。』
『話したくなったよ、わたしが見る明日を。
傍にいてくれるなら、いつだって強くいられるから。』
笑顔が眩しくて、温かい彼女を。
『教えたくなったよ、変わらない夢を。
聞いて欲しい話があるよ。頷いてくれたら、嬉しいな。』
幸せにすると、守ってやると、そう誓った。
『帰りたくなったよ、君のいる船へ。
かけがえのない君に今、もう一度伝えたいから。』
『帰りたくなったよ、君のいる船に。
聞いて欲しい言葉があるよ。受けとめてくれたら、嬉しいな。』
ああ、そうだな。
お前のところに帰るよ。
忘れたくても、忘れられない。
自分の胸に、生まれて初めての感情を植え付けたのは。
彼女の名前は…。
「モモ…!」
その瞬間、ずっと頭の中にくすぶっていた靄が一気に吹き飛んだ。