第17章 巨大樹
「ロー、目を覚まして。ロー!」
光の少女が消えてしまったあと、モモは必死にローを起こしたが、彼が目を開けてくれる様子はない。
毒が彼の身体を蝕んでいるのだ。
解毒薬を作ろうにも、毒の成分がわからないのでは作りようがない。
(どうしたら…。)
ねぇ、ロー。
わたしの声が聞こえないの…?
ロー…!
「え…?」
「どうしたの、ロー。」
父と一緒に医学の本を読んでいたローに、母がお茶を入れてくれた。
「…今、誰かが俺を呼んだ気がするんだ。」
「そんなわけないじゃない。変なお兄さま! だって、わたしたち、みんなこの部屋にいるのよ。」
そう、父も母も、ラミもみんな一緒にいる。
他に誰が自分を呼ぶというのだ。
「だよな…。俺、疲れてるのかな。」
「そうね、本を読み過ぎたのよ。少しお眠りなさい。」
母がふわりと毛布を掛けてくれた。
お眠りなさい。
深く、深く--。
心地よい眠気に瞼を閉じようとした、その時…。
『ロー。』
まただ…。
自分を呼ぶ声に、パチリと目を開けた。
「どうしたんだ、ロー。」
父が不思議そうに尋ねる。
「誰かが…、誰かが俺を呼ぶんだ。」
そう、窓の外から。
立ち上がって、窓をの鍵を外した。
ギッと力を入れてみるけど、立て付けの悪い窓は開いてくれない。
「止めなさい、ロー。その窓は開かないよ。」
父の制止に、一度はその手を止める。
だけど…。
『ロー、わたしの声が聞こえないの?』
悲しそうに誰かが問う。
その泣きそうな声に、なぜだか胸が掻き乱れそうになった。
泣くなよ、俺が--。
再び、強く窓を押した。
「ロー。止めろと言っている。」
「…出来ない。」
父の制止を振り切った。
「どうして、お兄さま。ここはこんなに幸せなのに、どうしてそんなに外が気になるの?」
どうして?
そんなの、決まってる。
「呼んでるんだよ、俺を。」
「誰が?」
誰…。
俺を呼ぶのは、誰。