第17章 巨大樹
「なんだ、お前は…!」
「それはワシのセリフじゃの。貴様こそ、ワシの身体の中でなにをしておる。」
コイツの身体の中…!?
つまり、この樹の顔は、巨大樹の本体といったところか。
「ちょっくら、いなくなった仲間を探しにね。」
「ソヤツらのことか?」
「ああ。連れて帰らせてもらうぜ。」
ついでに、ここには見当たらないモモの仲間も一緒に。
「ならん。ソヤツらはワシの大事な養分じゃ。」
「ふざけんな、ジジィ。燃やされてぇのか。」
ボボ…と指先を炎に変えて威嚇する。
「悪魔の実の能力者か…。だが、止めておいた方がいい。ソヤツらを助けたいのならなァ。」
「なんだと?」
樹の面が、薄気味悪くクツクツと笑う。
「ワシの身体が燃えでもしてみろ、あっという間にソヤツまで燃え広がるじゃろう。」
確かに、この人面樹が燃えれば、ほとんど一体化した彼らの命も危うくなる。
「どちらにせよ、ソヤツらはもう、目を覚ますことはないがの。」
「なに? そいつァ、どういうこった。」
「見ての通りじゃ。我が毒に、解毒剤など存在しない。ソヤツらは、永遠に夢から覚めることはない。」
解毒剤が、ない?
ひとまずこの島から仲間を連れ出せば解決すると思っていたエースは、頭を殴られたような衝撃を受けた。
「なァに、心配するな。ソヤツらは今、人生で一番、幸せだった頃を夢見ておる。ソヤツらとて、きっと夢から覚めたくはないだろうよ。」
「ジジィ…、今すぐコイツらを解放しろ…。」
怒りの目を向けるエースを、人面樹は嘲笑った。
「出来ぬ、と言っておろう。我が名は“ユグドラシル”。この島の、王じゃ。」
ビキビキビキ…と太く鋭い枝が伸び、エースを取り囲む。
「小僧、そのマスクを外すがいい…。幸せな夢を見せてやろうぞ。」
「生憎だが…。俺ァ、今が一番幸せなんでね。」
炎を封じられ、タラリと汗を落とすエースを、鋭い木々が容赦なく襲った。