第17章 巨大樹
ズザザザ…。
「……うッ」
受け身もまともに取れず、モモは地下へ転がり落ちた。
何度も身体を打ちつけたけど、大きな外傷がなかったのは、粘着性のある樹液がクッションになったから。
それにしてもひどく匂う。
蜜を濃縮したような、甘ったるい香り。
いずれ自分にも毒素が回るだろうか。
「きゅきゅー…!」
頭上からヒスイの悲鳴が聞こえてきたと思ったら、ポインとモモの頭に激突した。
「痛…ッ、ってヒスイ! ついて来てしまったの?」
「きゅ!」
当然だ。
ローがいない今、モモを守ることができるのは、自分だけと思っている。
「仕方のない子。一緒に行きましょう。」
ヒスイを肩に乗せ、モモは松明に火を灯した。
「暗いわね。ローもエースも、どこにいるのかしら。」
足を滑らせないように、注意しながらモモは奥へと進んだ。
ほどなくして、最下層と思われる場所に着いたけど、そこにはいくつも別れ道があって、どこへ行ったらいいかわからない。
(この樹が人間を養分として吸収するのなら、根が太く集中している方に行けばいいはず…。)
いくつかの別れ道から、より根が太く、密集した入口を探した。
(こっちね…。)
そちらの道は、実は先ほどエースが進んだ道と同じ方向だ。
歩みを進めようとした、その時--。
『待って。』
「え…?」
突如として、左薬指の指輪が強く輝いた。
「な、なに…。眩し…。」
スターエメラルドが、こんなふうに光輝いたことは以前にもあった。
それはモモが歌を唄ったとき。
鉱石たちが歌に反応して、星のように輝いたのだ。
でも、今モモは歌を唄っていない。