第15章 オバケの森
「…ロー! どこ~!?」
深い霧が立ちこめる中、モモは声の限り叫んだ。
けれども愛しい人からの応答はない。
「どうなっているの…。」
モモがローの手を離してしまったのは、ほんの僅かな時間。
それも数メートルの距離だ。
それなのに、再び振り返ったときには、彼の姿はこつ然と消えてしまっていた。
ローがモモを置いてどこかへ行くとは思えない。
だとしたら、なにか非常事態が起きているのだ。
それは、ローかもしれないし、自分自身かもしれない。
「ヒスイ、ローの居場所とかわかったりしない?」
「きゅぅ…。」
申し訳なさそうに鳴いた。
「…そうよね、ごめんなさい。」
どうしよう。
迷子のときは、むやみに動かない方がいいって言うけど…。
そもそもこれは迷子なのだろうか。
しばらく待っていたけど、ローが戻って来る気配はない。
ならば…。
「行きましょう、ヒスイ。」
モモの方から彼を探すことに決めた。
ヒスイを肩に乗せ、竦む足を叱咤して歩き出した。
しばらく歩くと、先ほどローが放った覇気の効果は切れ、辺りにまた不穏な気配が感じられる。
「…オバケなんか出ない。オバケは気のせい。」
またもや例の呪文を繰り返し呟きながら突き進む。
ガサガサ。
「……ひッ」
揺れる木々に息が止まりそうになる。
ニュッと長いなにかが顔を出した。
「きゃ…ッ!……?」
木の幹に巻きついて、こちらを見つめる大蛇。
「きゅきゅ!」
チロリと舌をだして、今にも飛びかかってきそうだ。
「なんだ、蛇か。あー、驚いた…。」
「…きゅ!?」
オバケじゃなきゃ、怖くない。
ホッと息を吐いて、そのまま進む。