第3章 ハートの海賊団
窓から入る日差しが眩しくなってきて、ローは顔を上げた。
(…ん。なんだ、もうこんな時間か。)
気がつくと時計の針はお昼をとっくに回っていた。
読書に集中していて時間の経過がわからなかったのだ。
いつもならクルーの誰かが昼食を持ってくるはずだが、今日はどうしたのだろう。
「まったく、どいつもこいつも…。」
先日、航海士のベポがエターナルポースを壊した。
いつ何時、ログポースが都合の悪い島を指してもいいようにエターナルポースは常備していた。
案の定、次に向かう島はログが溜まるのに1年もかかる気長な島だった。
そんな悠長に滞在してられない。
ローたちはどこかでエターナルポースを調達しなければならなくなった。
そこに都合良く、海軍の船。
そんな経緯があり、彼らの船を襲撃したのだが、そこでエターナルポースの他に思わぬ拾いものをしてしまった。
口の利けぬ少女。
なぜ海軍に捕らわれていたのかはわからないが、目覚めた少女はとても珍しい金緑の瞳をしていた。
人間オークションに出したら高く売れそうだが、海軍がそんな理由で捕らえたりしないだろう。
ふと、彼女が目覚めたときの事故を思い出した。
(…ちくしょう、アイツらめ。)
今でも思い出すと腹が立つ。
ローはキスが嫌いだ。
経験はたくさんしたが、女との口付けに快感を感じないし、むしろ気持ち悪いと思う。
だから街で女を買っても、決して口付けることなく己の欲望だけを吐き出す。
だけど別にモモを気持ち悪いと思うわけじゃない。
むしろ逆で、キスをしたとき心臓が大きく音を立てた。
もちろん予期せぬ事態だったからだろうが、そんな自分を仲間に、そしてモモに間近で見られたらのが、たまらなく悔しかった。
あの時のローはさぞかし間抜けな顔をしてただろう。
ふー…。
苛つきを深呼吸と共に吐き出すと、ローは椅子から腰を上げた。
いつまで待っても昼食はやって来なさそうだ。