第3章 ハートの海賊団
それから3日。
ローの診療のかいあって、モモの傷はずいぶんと良くなった。
『死の外科医』なんて呼ばれているが、彼の腕は相当なものだ。
目を覚ましたとき、実はとても驚いた。
なにせ、目の前に手配書と同じ顔が間近にあったのだから。
(…そういえば、あの時、あの人はなにをしてたのかしら。)
幸か不幸か、モモはその時の事件を覚えていない。
「おはよー、モモ!起きてる?」
ベポが医務室に入ってくる。
このおしゃべり好きなクマとは、とても仲良しになれた。
なんでクマなのにしゃべるんだろう?と疑問もあったが、自分は人なのにしゃべらないから同じようなものか、ということで片付けた。
ベポは人の気持ちに敏感で、モモがしゃべれなくても言いたいことを正しく理解してくれた。
だから彼とは筆記なしで会話をすることが楽しめる。
「お腹空いた?朝ゴハン持ってきたよ。」
(ありがとう。)
「今日はねー、魚が釣れたがら焼き魚だよ。」
アゴがしゃくれたユニークな魚がこんがりと焼けている。
美味しそうか、と言われたら微妙なところだ。
正直、味も微妙…。
(男ばかりだと、こんなものなのかな。)
「あんまり美味しくない? ボクもねー、生の方がいいと思ったんだ。」
それはベポがクマだからでは…。
ふむ、と考える。
実はそろそろ身体を動かしたい。
横になってばかりだと、いろいろと身体に悪い気がする。
(ねえ、ベポ。)
「なにー?」
チョイと料理を指差す。
「料理を作ってるのは誰かって? シャチとペンギンが交代で作るよ。」
ベポが作ると料理に毛が混じるので当番には入っていない。
(お願いがあるんだけど…。)
モモはベポのツナギの裾を握って上目遣いに見た。