第15章 オバケの森
「なにしてんだ…。ホラ、大丈夫か?」
「……グス。」
差し出された手を、半泣きしながら掴んだ。
落ち葉やら、土やらを払ってやりながら立たせる。
「なにがそんなに怖えんだよ。」
なにが、と言われても答えられない。
あえて言うなら、得体のしれないところとか。
「アレコレ想像するからいけねェんだ。勝手に自分で設定しとけ。」
「…設定って?」
「例えば…。」
ガサリ。
別の茂みから、今度はどこぞのおっさんの顔をした犬が出てきた。
「ひぃ…ッ、人面犬…!」
ニヤリと笑った顔が恐ろしい。
「違ェよ。あれは、飼い主のおっさんによく似た犬だ。」
「…は?」
「犬は飼い主に似るって言うだろ? アイツもそれが理由であんなツラになっちまったんだろ。」
そう言って、シッシッと追い払う。
ものすごいこじつけだ。
だいたいここ、無人島ですけど。
「じゃ、じゃあ、アレは!?」
椅子ほどの大きさもあるキノコが、列をなしてゾワゾワと歩いている。
中心部には顔らしきものもある。
「顔があって、歩く植物ならいるな。ここにも。」
言って足下を指差した。
きゅきゅ? とヒスイが首を傾げてみせる。
まあ、確かに…。
「お前が怖えと思うモンは、たいがい気のせいだ。だからホラ、行くぞ。」
モモが呆気にとられている間に、ローは強引にその手を引いた。
(うん…。でも、確かに、さっきより怖くなくなったかも。)
この手の温かさがあるうちは、安心して歩いていけると思った。